個人再生と特定調停はともに債務整理の手法ですが、手続きの進め方はまったく異なっています。

個人再生は、民事再生法の規定に基づく再生手続の一つで、地方裁判所に再生手続開始を申し立てることによってプロセスが始まります。
裁判官が申し立てを認めて再生手続の開始を決定した後は、選任した再生委員や弁護士とともに向こう数年間の債務の弁済計画を再生計画案として作成し、期日までに裁判所に提出します。

その後、申立人に関わるすべての債権者から再生計画案に対する意見を受け付け、異議がなければ裁判所が再生計画案の認可を決定し、再生手続は終了となります。
以後は、債務者は再生計画にしたがって債権者に債務を弁済していきます。

これに対して特定調停は、民事調停法の特別法としてつくられた特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律に基づいて債務整理を行う方法です。
仕組みはひと言では裁判官が間に入って行う任意整理ということができます。
簡易裁判所に調停の申し立てを行って受理されると調停期日が指定され、当日に債務者と債権者が裁判所に出頭すると、裁判官と調停委員が双方の意見を聞いて合意可能な案をつくります。
この案に債務者と債権者の両者が合意すれば調停が成立となり、裁判所判決と同等の効力を持つ調停調書が作成され、以後は調書の内容にしたがって債務の弁済をすすめていくことになります。

個人再生と特定調停では手続きの進め方だけでなく、効力も異なります。
個人再生の場合は、債権者が複数いる場合は全員が再生手続にかかわることになり、再生計画に基づく債務の弁済が完了すれば、原則として残りの債務は免除となります。
弁済しなければならない債務についても、最大で申し立てた時点で保有していた債務の5分の1程度まで減らすことができます。
このため、債務者にとっては非常に強い効力がありますが、債権者にとっては一部の債権を回収できない可能性があります。
一方、特定調停の場合は一部の債権者のみを相手とすることができますが、調停が成立しても債務が免除されるケースが非常に限定される点が個人再生とは大きく異なります。
債務の減額は可能ですが、利息制限法の上限金利に基づく引き直し計算を行った結果で減額幅が決まるため、再生手続のように大幅に減らすことは基本的にはできません。
任意整理と比較しても手間と費用がかかるため、調停による債務整理はあまり行われていないのが現状です。